DX
DXは3段階のフェーズがある! 各ステップの戦略と事例を解説

DXに取り組む企業が増えつつある一方で、途中で挫折している企業も少なくありません。
DXは一足飛びでは実現できず、段階的なフェーズを経て進化するものです。
当記事では、経済産業省が提唱するDXの3段階のフェーズの概要、効果的なDX推進の秘訣、各フェーズの成功事例を解説します。
DXの3段階のフェーズ

DXのフェーズとは、経済産業省のDXレポートにて言及される「DXの構造」を示した下記3段階の要素を指すことが主です。
- フェーズ1:デジタイゼーション
アナログ・物理データのデジタルデータ化 - フェーズ2:デジタライゼーション
個別の業務・製造プロセスのデジタル化 - フェーズ3:デジタルトランスフォーメーション
組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革
これらのフェーズは、企業が効率的にDXの取り組みを進めるための指針です。
関連記事:デジタイゼーションやデジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの違いは?
【フェーズ1】デジタイゼーション(Digitization)
DX実現の最初のフェーズである「デジタイゼーション」とは、アナログデータや物理的データをデジタルデータへと変換する取り組みです。
紙媒体の情報や手作業による業務をデジタル化することで、業務効率化やデータ管理の利便性向上を目指します。
具体的な施策例としては、以下が挙げられます。
- 紙媒体に記録していた情報の電子データ化
- 製品製造プロセスの電子化
- ITプラットフォームの整備
デジタイゼーションを実施すれば、データの保存や検索が容易となり、業務の標準化やコスト削減に繋がります。
IPAが実施した「DX動向2024調査」によると、実際に9割以上の企業がデジタイゼーションに取り組んでおり、64.7%もの企業が成果を実感しています。
施策自体は難しくないため、DXの最初の一歩として、また今後の施策の土台作りとしてのフェーズです。
参考:DX動向2024|IPA
【フェーズ2】デジタライゼーション(Digitalization)
DX実現の第2のフェーズである「デジタライゼーション」は、電子化された情報を活用し、業務フロー全体の効率化や業務改善を目指す取り組みです。
経済産業省は「個別業務や製造プロセスのデジタル化」と定義しています。
具体的な施策例としては、以下が挙げられます。
- RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による業務自動化
- AIを活用した業務効率化・業務改善
- IoTセンサー導入による製造ライン稼働状況の可視化
デジタライゼーションでは、積極的にデジタル技術・データを活用していくことで、生産性向上・業務負荷軽減・コスト削減に繋げていく点がフェーズ1との大きな違いです。
DXの中核に位置づけられるフェーズであり、企業全体の変革へとつなげる重要なステップとなります。
【フェーズ3】デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)
フェーズ3の「デジタルトランスフォーメーション」は、デジタル技術を活用してビジネスモデルや経営戦略そのものを根本から変革する取り組みです。
経済産業省は、「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革」と定義しています。
デジタルトランスフォーメーションの具体的な事例としては、以下が挙げられます。
- 電子棚札による店舗・EC連動ビジネスの実現
- 物流サプライチェーン一元管理ソリューションの創出
フェーズ2までは業務プロセス単位での最適化施策であるのに対し、DXそのものであるフェーズ3ではその範疇を大きく超え、経営者主導の全社的プロジェクトとなるのが特徴です。
関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?
DXの各フェーズを成功させるためのポイント
DXを成功に導くには、戦略的・組織的な取り組みが必要です。
以下に、DXの各フェーズを成功させるための重要なポイントを解説します。
経営層のリーダーシップ
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、DXの実現には企業トップのリーダーシップが重要な要因であるとしています。
加えて、組織全体を統括するポジションとして、CDO(Chief Digital Officer/最高デジタル責任者)の設置も推奨しています。
経営層が主導することで、組織全体が一丸となってDXに取り組む姿勢が生まれます。
また、下記の理由からも経営層のリーダーシップは重要です。
- DX推進への共通理解を形成するため
- 横断的連携が取れない構造となるのを防ぐため
- 非効率なIT投資が発生するのを防ぐため
大規模な組織では変化が進みにくいため、社内折衝による文化改革やトップによる一定の強制力の発揮も必要です。
また、DXはフェーズが進むほど戦略や施策が複雑化してくるため、経営層によるリードの重要性も増します。
参考:DX白書2023|IPA
データ活用と業務プロセスの効率化
データ活用による業務プロセスの効率化は、DXの中核を担う重要な取り組みです。
IPAも、単なるデータ化の枠を超えたデータ活用そのものが、DXの中核であると強調しています。
具体的な例では、経済産業省は「法人デジタルプラットフォーム」の活用により、行政手続きの効率化や政策立案力の強化を実現しました。
DXの各フェーズで実効性のある成果を得るには、データを価値ある形で活用し、業務プロセスを継続的に最適化していくことが鍵です。
特にDXが進むフェーズ2以降では、ビッグデータとAIの組み合わせが、迅速かつ正確な意思決定を支える有効な手段となりつつあります。
参考:DX白書2023|IPA
関連記事:DXが業務効率化に繋がる3つの理由
スモールスタートと段階的なアプローチ
DXは最初から全社的な展開を行うのではなく、小さな取り組みから始め、効果を検証しながらフェーズごとに拡大していく段階的な戦略が有効です。
例えば、フェーズ1〜2のようなDX初期段階では、以下のようなアプローチがおすすめです。
- OCRによる紙媒体のデータ化
- 電子契約システムによる契約業務のデジタル化
- 電子決済システムによる事務処理の効率化
まずは特定の部署や業務に絞り、難易度が低い施策から取り組むと、リスクを抑えつつ着実な成果を得ることが可能です。
DXフェーズ別の成功事例
DXの成功事例をフェーズ別に紹介します。
日本郵船株式会社のデジタライゼーション事例
日本郵船株式会社は、国際的な海運業を中核とした総合物流企業です。
デジタライゼーションの取り組みの結果として、以下のような成果を実現しました。
- AIを活用した配船計画の最適化により燃費効率を向上
- AIを活用した最適経済運航プロジェクトにより安全で効率的な船舶運航を実現
上記により、同社は全社的な業務効率化とコスト削減を達成。
取り組みが評価され、「DX銘柄2023」ならびに「DXグランプリ2023」にも選定されました。
株式会社ダイエーのデジタルトランスフォーメーション事例
株式会社ダイエーは、イオングループの一員として、複数ブランドの食品スーパーマーケットを運営する企業です。
買い物客が商品を手に取るだけで決済が完了する「ウォークスルー店舗」の導入をはじめとした取り組みにより、以下のような成果を実現しました。
- 商品を手に取って退店するだけで購入が完了する仕組みを構築
- 従来の買い物であった「レジでの支払い」を撤廃
- レジ待ち時間排除により斬新な買い物体験の提供・顧客満足度向上を実現
- AIにより店舗運営を効率化
テクノロジー活用によりビジネスモデルを変革し、経済産業省により「DX認定事業者」に選定されました。
関連記事:DX推進の成功事例
フェーズごとのポイントを押さえてDXを成功させよう
DXはフェーズごとに適切な戦略を立て、小さなアクションから段階的に進めることが重要です。
自社の現状の見極め、着実な打ち手を積み重ねて成功を目指しましょう。
DXの具体的な戦略策定や推進方法に課題を抱えている方は、DXコンサルティングの利用がおすすめです。
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