DX
DXの推進とは? 取り組みのステップを解説

DX推進の必要性を感じつつも、「どのように進めればよいのか」と悩む企業は多く存在します。
2025年の崖や国際競争力の低下といった深刻な課題が差し迫る中、DXを成功させるには、単なる技術導入では不十分です。
本記事では、DX推進の具体的な方法を解説します。
DX推進の重要性が高まっている背景
デジタル技術の進化と市場環境の急激な変化により、「DX推進」は企業の存続を左右する課題となっています。
日本では老朽化したITシステムの更新遅れや、国際競争力の低下が深刻化しており、迅速な対応が求められています。
「2025年の崖」の影響
「2025年の崖」は、日本企業が直面する深刻な経済的リスクです。
レガシーシステムの維持費増加やIT人材不足がDX推進を妨げており、経済産業省の報告によれば、2025年以降には年間最大12兆円の経済損失が見込まれています。
老朽化したシステムがブラックボックス化し、過剰なカスタマイズにより市場変化への対応力が低下。
加えて、セキュリティ対策の遅れという課題も浮き彫りになっています。
さらに、2025年にはSAPをはじめとする主要システムのサポート終了が相次ぎ、刷新作業が一段と困難になると予測されています。
この危機を乗り越えるには、経営層がDXを最優先課題として捉え、システムの更新と業務改革を同時に進めることが不可欠です。
関連記事:SAPがサポート終了!2025年(2027年)問題と対応方法を紹介
求められる国際競争力

出典:DX動向2024(独立行政法人情報処理推進機構) P9
DX推進は、国際市場で競争力を維持するために不可欠です。
米国や中国の先進企業はAIやIoTを活用し、迅速な意思決定と市場変化への柔軟な対応を実現しています。
一方、日本企業はデータ統合や柔軟な組織体制の構築が遅れ、競争力で差をつけられています。
DX動向2024の図表1-13によると、「新規製品・サービスの創出」で成果を挙げた米国企業は66.8%(*1)に達する一方、日本企業は25%※(*1)に留まっています。
「ビジネスモデルの変革」でも米国企業は71.3%(*1)が成果を報告する一方、日本企業は20.7%(*1)と、明確な差が見られます。
これらの結果は、米国企業が「新規製品やサービスの創出」や「ビジネスモデルの革新」に注力して競争優位性を高めているのに対し、日本企業は戦略的なDXの活用が進んでいないことを示しています。
国際競争力を強化するには、生成AIなどの最新技術を取り入れるだけでなく、それを経営戦略に結びつける必要があります。
日本企業は技術革新と経営ビジョンを融合させ、市場での優位性を築くことが求められます。
関連記事:DXによって実現する効果
参考:DX動向2024
(*1)本記事中の%は「DX動向2024 図表1-13」に記載の「すでに十分な成果が出ている・すでにある程度の成果が出ている」の数値を合算したもの
DX推進に取り組むための4ステップ
DX推進を成功させるには、明確なビジョンを設定し、取り組むべき領域を特定した上で、段階的なプロセスを進めることが重要です。
さらに、成果を継続的に評価・改善することで、持続可能な変革が実現します。
ステップ1:ビジョンの策定
DX推進の第一歩は、企業の「あるべき姿」を明確にすることです。
このビジョンは、単なる効率化に留まらず、社会や顧客に提供する価値を再定義する必要があります。
経営層のリーダーシップが欠かせない要素であり、全社員への共有がDXの推進に不可欠です。
たとえば、「AIやIoTを活用して顧客課題を解決する業界リーダーを目指す」や「持続可能な成長を支えるサービスプロバイダーになる」といった目標があげられます。
未来から逆算する「バックキャスティング」を用いることで、中長期的な目標が明確になり、従業員が主体的に行動できる基盤が整います。
ステップ2:目的の明確化
取り組むべき領域を具体的に定めます。
自社の課題や強みを分析し、最大の効果が期待できる分野を特定することが重要です。
たとえば、業務効率化を目的とする場合、単純作業を自動化し、従業員が高付加価値の業務に専念できる環境を整備することが考えられます。
また、新規事業の創出を目指す場合には、顧客の潜在ニーズを分析し、新たな収益源を開拓する戦略が必要です。
このように、目的を明確に設定することで、取り組みの方向性がより具体的になり、成果を最大化できます。
ステップ3:推進プロセスの策定
理想の状態と現状のギャップを埋めるためには、柔軟な計画と実行が重要です。
まず、小規模なプロジェクトを立ち上げ、その結果をもとに全社的な展開へとつなげます。
この際、アジャイル開発手法を取り入れることで、迅速なフィードバックを得て改善を繰り返すことが可能になります。
また、経営層と現場が一体となって取り組む体制の構築が不可欠です。
定期的なレビューを行い、必要なリソースの迅速な補充や、発生した問題を即座に解決することで、プロセス全体をスムーズに進めることができます。
ステップ4:成果評価とガバナンスの策定
DXを成功させるには、進捗や成果を定量的な指標(KPI)で評価し、戦略を柔軟に見直すことが重要です。
新規顧客獲得率や生産性向上といった具体的な数値を用いて成果を可視化し、必要に応じて迅速に調整を行える体制を整えます。
また、企業文化の変革には経営者のリーダーシップが不可欠です。
経営者がデジタル戦略のビジョンを示し、進捗を把握しながら課題に対応することで、組織全体を一貫した方向に導きます。
業務部門やIT部門との連携を通じた課題の継続的な分析と戦略の調整が、DXの成功を支えます。
参考:DX白書2023
DX推進の成功事例
以下では、実際にDX推進を成功させた2つの事例を紹介します。
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事例①浜松倉庫株式会社:従業員のマインドチェンジで生産性30%向上
浜松倉庫株式会社は、2015年から「持続可能で豊かな社会を実現する物流サービス」を目指し、若手管理職を中心とした社内プロジェクト形式でDXを推進してきました。
DX推進にあたっては、自分たちで一から考えるボトムアップ型のアプローチを採用し、従業員一人ひとりがゼロベースで業務を見直し、現場に根ざした改革を進行。
また、サプライチェーン全体を意識し、顧客を巻き込む戦略も展開しています。
顧客アンケートの実施やデータ提供手段の多様化を通じて、顧客との連携を強化し、全体最適化を図る体制を構築しました。
さらに、従業員の意識改革を促進するために、小規模な施策を繰り返し実施。
これにより、プロジェクトの達成感を小さな成功体験として共有し、社内の賛同者を増やしていくことに成功しています。
取り組みの結果、「ロボット」「AI」「BIツール」を活用した省力化を実現し、生産性を30%向上させました。
加えて、従業員が自発的に改善を立案する文化が育まれ、組織の意識改革が進みました。
浜松倉庫株式会社の成功の鍵は、「DXは手段であり目的ではない」という考えを徹底したことにあります。
デジタル技術を業務変革の一環として位置づけ、現場と顧客を巻き込みながら推進した姿勢が成果を生んだのです。
事例②株式会社リノメタル:土壌づくりが大型案件の受注を実現
株式会社リノメタルは、属人的な業務からの脱却とモノづくり・事務のデジタル化を推進してきました。
「200年続く会社」というビジョンを掲げ、知識や情報をデジタルデータ化し、即時活用できる仕組みを構築しました。
DXを推進する中で、新しいシステムへの移行時には社員からの反発もありましたが、「このシステムを活用することでどのような明るい未来が待っているか」を繰り返し伝えることで、理解と共感を得られています。
また、DX環境を活用するための人材育成にも注力し、「エキスパート手当」といった制度を整備することで、社員の自主性を育て、DX推進の基盤を強化しました。
さらに、DX推進に向けたガバナンスシステムも重要な役割を果たしています。
経営計画発表会では、社内外に向けて方針や戦略を発信するとともに、「私たちの明るい未来設計図」と題し「3年後の未来」を具体的に描き、社内に掲示することでメッセージを共有しました。
取り組みの結果、生産管理業務の年間工数を600時間削減。
また、大型案件の受注を実現し、年間売上を12.7億円増加させるという大きな成果を上げています。
株式会社リノメタルの成功は、「DXは人が主役」という信念に基づき、経営層が継続的にメッセージを発信し、社員の意識改革を促した点にあります。
DX推進を成功させるために
DX推進を成功させるには、技術導入ではなく、現場の地道な努力と経営層の強力なリーダーシップです。
しかし、DXの知見がない場合は詳細な現状分析による目標設定や、解決すべき問題の最適な優先順位付けが難しい場合もあるでしょう。
ノムラシステムは、戦略策定から成果評価までを一貫して支援し、現場と経営層の連携を強化する体制構築をサポートします。
初めてDX推進に挑戦する企業にも柔軟にサポートいたしますので、DXコンサルティングをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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