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製造業の品質管理とは?課題解決から最新DX事例まで徹底解説!

製造業における品質管理は、企業の競争力を左右する重要な業務です。しかし現実には、多くの企業が「ヒューマンエラーによるミスやトラブル」「人材不足による業務負担の増加」「高齢化による技術・ノウハウ継承の困難」といった課題に直面しています。
このような課題を解決するカギが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用です。当記事では、品質管理の基本から最新のDX事例まで、実践的な情報を詳しく解説します。
関連記事:製造業のDXとは?中小企業の課題・進め方・成功事例まで徹底解説
製造業における品質管理とは品質を維持・向上させるための取り組み
品質管理とは、製品やサービスの品質を維持・向上させるための取り組みです。生産工程での品質ばらつきや不良品の発生を防ぎ、顧客が求める品質レベルを達成することを目的としており、さまざまな統計的手法や品質管理ツールが活用されます。
日本の製造業は、「高品質で信頼性が高い」というブランドイメージを守るため、品質管理が特に重視されます。ISO 9001に代表される国際規格認証も広く普及しており、継続的な改善への取り組みは、すでに製造業界全体に広く浸透しています。
また、品質管理は以下の側面から企業経営に貢献する役割も持ちます。
- 企業イメージの向上
- 顧客満足度の向上
- コストダウン
このように、品質管理は企業の競争力を高める重要な役割を果たしています。
品質管理と品質保証の違い|QCは工程を管理、QAは全体を保証
品質管理(QC)は「良い製品を作るための現場の管理」で、生産工程に焦点を当てています。一方、品質保証(QA)は「顧客に良い製品が届くことを保証する」取り組みで、企画から販売、そしてアフターサポートまで、製品のライフサイクル全体を対象とします。
項目 | 品質管理(QC) | 品質保証(QA) |
---|---|---|
業務範囲 | 生産工程に限定 作り手の視点 | 企画〜出荷後まで全工程 顧客の視点 |
責任範囲 | 製造・出荷までの品質担保 | 顧客に対する品質保証 長期に及ぶ |
担当者 | 工場や製造部門の担当者 | 社内外の調整役 |
品質管理が製造現場に焦点を当てた活動であるのに対し、品質保証は顧客に製品が届いてからもその品質を保証するという、より広範な役割を担っていることがわかります。
従来型品質管理の課題とDX導入で解決できること
品質管理は、人材不足や属人化といった課題に直面しています。DXを取り入れることで、以下のような課題の解決が期待できます。
- 属人化・技能継承の難しさ
- 人材不足と検査負担の増大
- データ活用不足・リアルタイム性欠如
技能継承の難しさ
製造業の品質管理において、熟練技術者の経験や勘に依存した体制が長年続いています。従来の「見て盗む」文化や口頭による指導では、暗黙知が形式知化されにくく、若手人材の早期戦力化が進まないのが現状です。
以下のようなDXを推進すれば、技能やノウハウを形式知化し、共有することが可能となります。
- 作業手順を動画や電子マニュアル化
- クラウド型のナレッジ共有プラットフォームの導入
このような仕組みにより、組織全体で均質な品質基準を維持しやすくなり、技能継承の課題解決が期待できます。
人材不足による検査負担の増加
日本の生産年齢人口は1995年の8,716万人をピークに減少を続け、2025年には7,310万人と過去最低水準になると推計されています。製造業でも人材不足が顕著であり、特に検査工程では人員不足が負担増につながっている状況です。
IoT・AI・ロボットを導入した自動検査システムを活用すれば、検査員の負担を軽減しつつ、検査精度の均一化が可能となります。検査データをクラウドで蓄積・共有することで、現場教育や改善活動に役立てることが可能です。
人手に頼っていた作業をデジタルで代替することで、少人数体制でも効率的な運営が期待できます。
関連記事:製造業における人手不足とは?現状・原因から対策・事例まで徹底解説
参考:人口推計-2025年(令和7年)4月報-|総務省統計局
データ活用不足・リアルタイム性欠如
従来の品質管理では、紙帳票やExcelファイルを用いたアナログな記録が中心で、データが分散・属人化する傾向にありました。その結果、不具合発生時に原因を特定するまで時間を要し、トレーサビリティや市場クレーム対応の遅れが課題となっています。
IoTセンサー・生産設備からデータを自動収集すれば、クラウド上でリアルタイムに分析する仕組みを整備することが可能です。AIによる不良予測や工程最適化を行うことで、問題の未然防止や迅速な原因分析が可能となります。
従来の「事後対応型」から「予防型」の品質管理へとシフトし、より効率的で確実な品質保証を実現できるでしょう。
製造業の品質管理を効率化させる方法|工程管理・検査・改善のデジタル化
製造業の品質管理を効率化するには、工程管理・検査・改善の各段階でデジタル技術を活用することが重要です。
例えば、工程管理をデジタル化することで、現場データを自動収集し可視化できます。これにより、異常の早期検知だけでなく、クラウド基盤を通じて多拠点で品質情報を共有し、統一基準での管理が可能です。
また、改善の段階ではデジタルツールを用いてPDCAサイクルを短期間で回すことで、客観的かつ合理的に改善活動を推進できます。加えて、クラウド上で過去事例を共有することで、迅速な対応や再発防止に有効です。
このように、各段階でデジタル化を進めることで、品質向上と業務効率化を同時に実現できます。
品質管理を自動化する施策
AIやIoTの進化により、人に依存しない新しい品質管理が可能になっています。自動化によって得られる変化は下記の二つです。
- 欠陥検出の高精度化(画像認識)
- IoTセンサーによるリアルタイム監視
欠陥検出の高精度化(画像認識)
AI画像認識やセンサー融合技術は、人間の目視では見逃しがちな、微細な傷や異物混入を高精度で検出できる技術です。温度・湿度・振動などの複数のセンサー情報と画像データを組み合わせることで、不良品検知の精度が大幅に向上します。
例えば、以下のような検知が可能です。
- 見た目は正常でも温度が異常に高い製品を検出
- 振動パターンから内部構造の異常を判断
製造業では製品の品質管理や異常検知に活用されており、人為的なミスや属人化リスクを低減し、検査作業の標準化を促進しています。
IoTセンサーによるリアルタイム監視
スマートファクトリーでは、IoTセンサー・クラウド・AI・ビッグデータ解析などの先端技術を活用して工程データをリアルタイムで収集・監視し、製造現場をデジタル化・自動化しています。
収集されたデータはクラウドに蓄積され、AIによる解析を通じて異常検知・予兆保全・工程最適化に活用されます。センサーが異常を検知すると管理システムに通知され、早期対応による生産ロスの削減や歩留まり改善を実現します。
近年ではAIを活用した予知保全が注目されており、将来的には多拠点統合監視体制の拡充が見込まれています。
製造業における最新技術を活用した事例
品質管理は、理論だけでなく、実際の現場ではどう活かされているのかを知っておくことも重要です。ここでは、最新技術を活用した企業の具体的な事例から、品質管理の革新と成果を見ていきます。
- 【事例】キオクシア株式会社|AI解析と自動制御による高精度な品質管理
- 【事例】キューピー株式会社|AI原料検査で品質管理を高度化
【事例】キオクシア株式会社|AI解析と自動制御による高精度な品質管理
キオクシア株式会社の四日市工場は、原子レベルの精度が要求されるフラッシュメモリ製造において、AI技術を駆使した革新的な品質管理システムを構築しました。同工場では1日30億件にのぼる膨大なデータを製造装置や検査装置から収集し、AI技術を駆使してリアルタイム解析を実施しています。
システムの構築により、従来の経験や直感に頼った品質管理から脱却し、以下のようなデータに基づく「ロジカルな品質管理」を実現しました。
- 統計手法を用いて製造装置の最適な設定値を決定
- 数値に基づいて製造プロセスを自動で制御
人間の技能だけでは対応困難な領域をDXで補完することで、高効率・高品質なスマートファクトリーとして進化を続けています。
参考:「わずか2mm」に込められた大容量フラッシュメモリの革新技術AIの進化を後工程で支える
【事例】キューピー株式会社|AI原料検査で品質管理を高度化
キューピー株式会社は、従来目視で行っていたカット野菜の品質検査をディープラーニング技術で自動化し、検査精度を飛躍的に向上させています。
従来の検査手法では高精度な検出が困難でしたが、自社開発したAI検査装置に「良品」のパターンを学習させ、良品以外をすべて不良として検出する発想により、不良判定の精度を飛躍的に向上しています。
開発した検査装置は、操作が簡単で狭い工場にも設置できる「シンプル&コンパクト」な設計で、ベビーフード用冷凍原料での実績を基に惣菜工場へと展開を拡大しています。
現在では食品業界全体への提供も検討しており、AI検査技術による「安全・安心」の実現を目指しています。
参考:AIを活用した原料検査装置をグループに展開|Kewpie
まとめ|品質管理のDXは企業成長を支える戦略的基盤
製造業の品質管理は、人材不足・技術継承の困難・データ活用の不備といった現実的な課題が、企業の競争力を脅かしています。しかし、品質管理のDXを推進すれば、そうした問題の解決を図り、企業成長を支える戦略的基盤を構築することが可能です。
最新技術の活用は品質向上とコストダウンの両立に寄与する、有効な手段の一つとなり得ます。ノムラシステムでは、課題整理から導入まで伴走型の支援を提供しています。品質管理のDXを検討している企業の方は、お気軽にご相談ください。