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SAP製品は生産管理に役立つ?PPモジュール活用のメリットと事例を紹介

SAP製品には、生産管理を支援する「生産管理(Production Planning)モジュール」が搭載されており、在庫の最適化や納期順守の実現などに役立ちます。
本記事では、生産管理モジュールの基本機能や導入メリット、注意点に加え、実際の導入事例も紹介します。
SAP製品の生産管理モジュール(PPモジュール)が担う役割|生産計画と生産管理ができる
SAPは、ERPを中心とした企業向け業務管理ソフトウェアを提供する企業です。
ERPシステムには、生産管理モジュールが含まれており、生産管理の中核となる「生産計画」「製造指図」「実績管理」といった業務を支援します。
生産管理モジュールは、PPモジュールとも呼ばれており、生産指図や進捗状況、在庫の過不足といった情報をリアルタイムで可視化できます。
現場の即応力や納期順守に役立つ機能です。
また、製造工程を一元管理できるため、計画と実行のズレを最小限に抑え、管理工数の削減や生産性向上にも有効といえます。
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生産管理にSAP製品を導入するメリット
生産管理にSAP製品を導入した場合、主に以下の3つのメリットがあります。
- 生産計画と在庫の最適化
- 製造進捗のリアルタイムな把握
- 部門を横断した情報連携による管理ロスの削減
ここでは、それぞれのメリットを解説します。
生産計画と在庫の最適化
SAP製品の導入により、需要予測や受注情報をもとにした精度の高い生産計画の立案が可能です。
とくに、生産管理モジュールのMRP(資材所要量計画)機能は、必要な部品や資材の所要量を自動的に算出し、過剰在庫や欠品を防ぐうえで役立ちます。
従来のMRPは、計算負荷が大きく時間がかかる点が問題でした。
一方で、SAP S/4HANAでは、MRPの計算をリアルタイムで処理できるため、変化に即応した柔軟な生産計画の策定が実現します。
このように、適正在庫を維持しやすくなり、在庫管理コストの削減や納期順守につながる点はメリットです。
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製造進捗のリアルタイムな把握
SAP製品には、生産現場における「製造指図」をリアルタイムで監視できるアプリが備わっており、作業単位での進捗状況を即時に把握できます。
これにより、予定とのズレや進捗の遅延、作業ミスなどの異常をいち早く察知し、迅速な対応につなげられる点は、生産管理にSAP製品を導入するメリットです。
進捗を把握できる環境が整えば、トラブルの長期化や品質低下といったリスクも回避しやすくなります。
また、異常発生時の要因分析や是正措置のスピーディーな検討は、現場の改善サイクルの迅速化を後押しするポイントです。
生産管理におけるSAP製品の導入は、現場の安定稼働を支える重要な要素といえるでしょう。
部門を横断した情報連携による管理ロスの削減
SAP製品を生産管理に導入するメリットのひとつが、生産・在庫・会計・保守など、各部門の情報を共通の基盤で一元管理できる点です。
これにより、部門間で発生しがちなタイムラグやデータの不一致を低減できます。
従来は、部署ごとに異なるシステムを用いた管理や、担当者の経験に依存した属人的な運用も少なくありませんでした。
SAP製品によってデータが統一されることで、リアルタイムな情報共有が実現します。
その結果、確認作業の手間や二重入力といった非効率による、管理ロスが大幅に減少し、作業全体のスピードや精度の向上が期待できるでしょう。
SAP製品が生産管理に使えないと誤解される背景|システムの柔軟性への懸念
「SAP製品は生産管理に使えない」との声から導入をためらう企業もありますが、そうした見解の多くは誤解に基づいていると考えられます。
生産管理モジュールに含まれるMRP(資材所要量計画)機能は、あらかじめ設定された計画に基づき所要量を算出する仕組みです。
またERPシステムは、データ改ざん防止を含む履歴管理の観点から、登録されたデータは直接取消ができず修正対応が必要になります。
計画が変わりやすく突発的な対応が求められる製造現場では柔軟な運用が難しく、さらにシステム操作の手間が現場担当者の負荷となることが、SAP製品は生産管理に使えないと感じられる理由です。
しかし実際には、運用設計や他システムとの連携によって柔軟な対応が可能です。
導入目的と自社の業務プロセスに適した設計を行えば、生産管理においても十分に適応する仕組みといえます。
生産管理におけるSAP製品導入の注意点
生産管理にSAP製品を導入し成果を上げるには、主に以下の注意点を押さえておくことが大切です。
- 業務プロセスとの整合性の確保
- マスターデータの整備と管理体制の構築
- 現場部門との連携と巻き込み
ここでは、各注意点を解説します。
業務プロセスとの整合性の確保
SAP製品、とくに 生産管理に活用されるS/4HANA Cloud では「Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる)」という設計思想が推奨されています。
そのため、自社独自の業務フローが多い企業のなかでも、受注生産型のように柔軟性を重視する業態では、既存プロセスとのギャップが顕在化しやすい点に注意が必要です。
導入にあたっては、標準機能に業務を合わせる形での業務改革を見据え、業務部門との丁寧な合意形成に加え、段階的な移行プロセスの設計や社内調整も求められます。
スムーズに活用するためにも、整合性を確保したうえで導入を検討しましょう。
関連記事:失敗しないためのFit to Standardの進め方とは?
マスターデータの整備と管理体制の構築
SAPのERPシステムでは、一度登録したデータを上書きできない仕組みになっており、訂正には「赤伝」と呼ばれる取消伝票の処理が必要です。
たとえば、実在庫とシステム在庫に不一致が生じた場合でも、単純な再入力では修正できず、訂正作業が煩雑になりやすい傾向にあります。
こうした特性から、正確なマスターデータの整備と入力ミスを最小限に抑える運用ルールの徹底が不可欠です。
とくに大量のデータを日常的に扱う生産現場では、事前に運用設計を固めておくことが、安定したシステム活用につながります。
SAP製品を円滑に活用するためにも、現場と情報管理部門が連携し、データ精度を維持する体制を構築しましょう。
現場部門との連携と巻き込み
SAP製品を導入する際は、実際にオペレーションを担う業務部門と現場部門との連携が欠かせません。
導入後に「現場の実態と合わない」「操作が複雑」などのギャップが表面化し、システム定着の障壁になるケースも見られます。
こうした問題を回避するには、従来の業務とSAP製品の標準機能の丁寧なすり合わせが大切です。
場合によっては、業務手順自体の大幅な見直しも求められます。
現場の実情に即した運用を実現するためにも、業務部門の理解と合意形成を得ながら、段階的に導入プロセスを進めましょう。
SAP製品を生産管理に導入した事例
SAP製品を生産管理に導入して成功した事例を2つ紹介します。
- 株式会社小木曽工業|複数現場の生産管理をSAP製品で最適化
- マツモトプレシジョン株式会社|SAP製品で業務を標準化し生産性を約30%向上
株式会社小木曽工業|複数現場の生産管理をSAP製品で最適化
株式会社小木曽工業では、2005年に導入した生産管理システムを長年利用し、現場ごとにシステムを作り込んだ結果、属人化が進み全体最適が難しい状況でした。
問題解決を目指してSAP製品を導入し、複数工場間における生産管理の標準化と業務の効率化を実現しています。
具体的には、人員を15〜16%削減しながらも、過去最高の売上を記録したほか、2024年には産業機械向けの売上が前年比20%向上を達成しました。
また、生産管理に加え、財務・販売・在庫管理も統合したことで、経営の可視化と効率化にも成功しており、SAP製品導入の好事例といえるでしょう。
マツモトプレシジョン株式会社|SAP製品で業務を標準化し生産性を約30%向上
マツモトプレシジョン株式会社では、従来、製品別の利益や原価を正確に把握しきれず、原価管理が曖昧な状態になっていました。
SAP S/4HANAをベースにした共通ERPプラットフォームの導入により、製品単位での収益性や原価の可視化を実現し、部門横断的な業務の標準化と全体最適にも成功しています。
その結果、売上総利益は約30%、営業利益率も3%向上しました。
また、2022年には4%の賃上げが実現した点もSAP製品導入の成果のひとつです。
以降の継続的な賃上げにもつながっており、経営の健全化と従業員還元の好循環が生まれた事例といえます。
SAP製品は生産管理にも効果的なシステム
SAP製品は生産管理には向かないという声がありますが、適切な導入プロセスと運用体制を整えれば、現場の問題解決に役立ちます。
SAP製品の生産管理(Production Planning)モジュールは、生産計画の立案や製造進捗のリアルタイム把握、部門間の情報連携に活用可能です。
ノムラシステムコーポレーションでは、お客様のニーズを踏まえたSAP製品導入のサポートをしています。
導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
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