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組織デザインとは|変化に強い組織をつくるための基礎知識
組織を取り巻く環境が複雑化するなかで、策定した戦略を実行へと移すためには、組織環境を整備することが不可欠です。
そこで重要となるのが「組織デザイン」です。組織デザインは、従業員が能力を活かす組織を設計し、変化に強い組織を構築する取り組みとして、近年注目を集めています。
本記事では、組織デザインの意味や重要性、組織形態、6つの構成要素についてわかりやすく解説します。
組織デザインとは|従業員が最大限に能力を活かせるように組織を設計すること
組織デザインとは、従業員が持つ力を最大限に引き出し、組織全体が効率的に機能するよう設計する取り組みです。
単なる組織図や制度の作成にとどまらず、戦略・構造・人材・文化など、複数の要素を調整し、企業が目指す成果を実現するための仕組みを構築します。最適な組織の形は企業の状況や市場環境により変化するため、事業戦略に合わせて見直す必要があります。
また、組織デザインにより設計した仕組みを現場に根付かせるには、チェンジマネジメントの考え方が欠かせません。チェンジマネジメントは、組織改革に対する不安や抵抗を和らげることで、組織デザインを形だけで終わらせず、現場に根付いた運用へとつなげる役割を担います。
チェンジマネジメントについては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:チェンジマネジメントとは?意味・目的・メリットをわかりやすく解説
組織デザインが重要視される背景
組織デザインが注目される背景は、以下のとおりです。
- 経営環境の複雑化
- 人材の多様化
経営環境の複雑化
近年、デジタル変革の加速やグローバル化の進展により、経営環境は一段と複雑化しています。そのため、従来の階層的で安定志向の組織構造では、急速に変化する市場や多様化する顧客ニーズに十分に対応できません。
経営環境が複雑化するなかで事業を円滑に進めるには、部門間の連携を強化し、意思決定のスピードを高める必要があります。
こうした背景から、部門を越えて従業員一人ひとりの能力を組織全体で活かせる仕組みをつくる「組織デザイン」の重要性が高まっています。
人材の多様化
多様なバックグラウンドを持つ人材が働く企業において、個々の能力を活かすには、従来の画一的な組織構造や人事制度では対応しきれません。一人ひとりに合った評価基準やキャリア支援、働き方の選択肢など、柔軟な仕組みが求められます。
組織デザインは、こうした人材の多様性を前提に制度や文化を再設計し、組織全体が共通の目的意識を持って協働できる環境を整えるうえで欠かせません。
組織デザインで目指す基本的な組織形態
組織デザインで目指す基本的な組織形態は、以下の3つです。
- 事業部制組織|製品や地域、顧客ごとに事業部を構築し、独立した権限を持つ組織形態
- 職務別組織|職務ごとに部門を分ける組織形態
- マトリクス組織|事業部制組織と職務別組織を組み合わせた柔軟な組織形態
事業部制組織|製品や地域、顧客ごとに事業部を構築し、独立した権限を持つ組織形態
事業部制組織は、製品や地域、顧客ごとに事業部を構築し、営業・生産・マーケティングなどの必要な機能を内包させることで自立的に運営する組織形態です。
事業部制組織のメリットは、事業部ごとに意思決定の権限が設けられるため、戦略の実行速度が向上する点です。実際、旧松下電器産業(現パナソニック)は、製品分野ごとに事業部を設け、効率的な組織運営を実現しました。
一方、部門間の連携不足や業務の重複を防ぐために、各部門の権限や資源配分ルールの調整が必要です。
組織構造を改善する際は、権限付与やリソース配分が、他の部門や全社運営にどのような影響を及ぼすかを事前に整理する「インパクト分析」が重要です。
インパクト分析については、以下で詳しく解説しています。
関連記事:インパクト分析とは?目的・手順・指標をわかりやすく解説
職務別組織|職務ごとに部門を分ける組織形態
職務別組織は、営業・生産・開発・人事などの職務ごとに部門を分け、専門性を高めながら業務を進める組織形態です。
各部門にノウハウを集約できるため、技術力の向上や品質改善、効率的な業務遂行につながります。
一方でパナソニックは一時期、事業部制から職能別組織へ移行したものの、部門間調整の複雑化による意思決定の遅れが課題となり、再び事業部制へ回帰しました。
したがって、職務別組織で意思決定のスピードを保つためには、部門横断の情報共有と連携の仕組みが不可欠です。
マトリクス組織|事業部制組織と職務別組織を組み合わせた柔軟な組織形態
マトリクス組織は、事業部制組織と職務別組織を組み合わせた、専門性を維持しながら全社的な連携を促進できる組織形態です。
例えばトヨタ自動車では、地域別組織と製品群ごとのカンパニーを設置し、企画から生産までの権限を各カンパニーの責任者に集約することで、一貫したオペレーションと迅速な意思決定を実現しています。
一方、指揮系統が複数になるため、優先順位の衝突や意思決定の遅れが生じやすく、個人別KPIの設定や進捗状況の可視化が必要です。
組織デザインを構成する6つの要素
組織デザインを構成する主な要素は、以下の6つです。
- 組織構造|階層や部門配置を設計し、組織全体の連携を促進
- 業務|業務の量・内容を改善し、業務が効率的に進む仕組みを整備
- 人材|人材配置や教育を見直し、従業員がスキルを最大限に活かせる環境を構築
- 情報|KPIやシステム設計を整備し、横断的な情報共有を促進
- 意思決定|意思決定のスピードと一貫性を両立する仕組みを整備
- 評価|行動を方向づける公正なルールを築く
組織構造|階層や部門配置を設計し、組織全体の連携を促進
組織デザインでは、各部門が戦略目標に沿って機能するために、組織の階層や部門の配置、権限の割り当てを設計し、連携しやすい組織へ整えます。
例えばSaaS企業では、初期は顧客要望を開発に反映させるためにカスタマーサポート部門をプロダクト部門直下に置き、成長期には営業と連携して顧客満足を高める体制へと移行します。
このように、市場変化や事業成長に合わせて組織構造を柔軟に見直し、全社的に成果を出せる連携体制の構築が不可欠です。
業務|業務の量・内容を改善し、業務が効率的に進む仕組みを整備
組織デザインでは、各部門で担う役割を明確にしたうえで、非効率な作業や重複する作業を洗い出し、業務の生産性と効率を改善します。
例えば、システム導入による議事録作成業務の自動化や、定例会議そのものをなくす改善施策などが典型的です。
また、部門間連携を前提とした情報共有の流れや責任範囲を意識した業務設計によって、組織全体としての成果を高めやすくなります。業務の設計や改善を進める際は、プロジェクトマネジメントの考え方が効果的です。
プロジェクトマネジメントについては、以下の記事をご覧ください。
関連記事:プロジェクトマネジメントとは?重要性や手順、注意点について解説
人材|人材配置や教育を見直し、従業員がスキルを最大限に活かせる環境を構築
組織デザインでは、組織構造に応じて人材を最適化し、それぞれの役割が戦略目標の実現につながるよう体制を整えます。
具体的には、従業員の強みや得意分野に合わせて、配置や教育、評価を見直すことで、互いに補い合いながら変化に強い組織を形成します。
また、PMOやPMなど適切なスキルを持つリーダーを配置し、チームのモチベーションや生産性を維持することも重要です。
情報|KPIやシステム設計を整備し、横断的な情報共有を促進
情報は、組織内の人や部門をつなぎ、全体の動きを可視化する要素です。
例えば、グループウェアを導入するとスケジュールやタスク情報が一元管理され、情報共有が円滑になるため、意思決定のスピードと精度の向上が可能です。
また、売上だけでなく、スキル向上や組織力強化などのKPIを設定すると、意思決定や行動指標の基準に関する情報の透明性が高まり、チーム全体が共通の方向性を持って行動できます。
システム導入やKPI設計を通じて情報の流れを最適化し、全員が同じ目的を理解しながら動ける環境を整えることが、持続的な組織デザインにつながります。
意思決定|意思決定のスピードと一貫性を両立する仕組みを整備
組織デザインにおいて、意思決定は構造と文化を結びつける要素です。
トップダウンとボトムアップのバランスを取りつつ、現場への権限委譲や会議体・承認プロセスを明確に設計すると、迅速かつ一貫性のある意思決定を実現できます。
こうした意思決定の仕組みを整える役割を担うのが、PMOです。
PMOの詳細な役割については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:PMOの役割とは?PMとの違いや導入するメリット、ポイントを解説
評価|行動を方向づける公正なルールを築く
組織デザインにおいて、評価制度は従業員の行動と組織の目指す方向を一致させる役割を担います。従業員の成果やプロセスへの貢献を明確に評価し、報酬や昇進へ反映させることで、モチベーションが高まり、自律的な行動を促進します。
例えば、業務や意思決定のスピードを重視する文化を浸透させたい場合は、年功序列から成果主義への転換が効果的です。
評価の基準やプロセスの透明性を高め、公平かつ納得感のある制度へ改善することで、組織の持続的な成長につながります。
組織デザインに役立つフレームワーク|7Sモデルで全体を可視化する
組織デザインを効果的に進めるには、構造や制度などのハード面と、文化や人材などのソフト面を改善する必要があります。
その際に役立つフレームワークが、世界的戦略コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した「7Sモデル」です。7Sモデルは、以下7つの要素から組織が構成されるとする考え方です。
- ハード(目に見える仕組み)のS
- ソフト(人や文化に関わる要素)のS
- 戦略(Strategy)
- 構造(Structure)
- システム(System)
- 価値観(Shared Value)
- スキル(Skill)
- 人材(Staff)
- 組織スタイル(Style)
組織デザインでは、7Sモデルをもとに組織の課題を分析し、7つの要素をバランス良く改善することで、一体感のある組織づくりを目指します。
組織デザインを含め組織改革に役立つフレームワークについては、以下の記事をご覧ください。
関連記事:チェンジマネジメントのフレームワークとは?特徴と事例で学ぶ成功のポイント
人と戦略をつなぐ組織デザインを実践に生かそう
組織デザインは、従業員の能力を最大化し、変化に強い組織をつくるための取り組みです。評価制度や組織構造、人材配置などを市場変化や事業フェーズに合わせて柔軟に設計し、持続的な成長を目指しましょう。
組織デザインにお悩みの方は、ノムラコーポレーションまでお気軽にご相談ください。
【ディスクリプション】
組織デザインとは、従業員が能力を最大限活かせる環境を作るために、組織構造や評価などを最適化する取り組みです。本記事では、意味や6つの構成要素、役立つフレームワークを解説します。
