DX
DXマーケティングとは?領域・加速させるツール・事例までわかりやすく解説

マーケティング部門にも本格的なDXが求められています。
これまでのマーケティングでは複雑化した顧客接点や迅速な意思決定に対応しきれなくなってきており、組織とプロセスの変革が不可欠であるためです。
当記事では、マーケティングDXの基礎から、4つの変革領域、実際の導入事例までを詳しく紹介します。
マーケティングDXとは|マーケティング活動のデジタル化による変革
マーケティングDXとは、データやデジタル技術を活用してマーケティング活動全体を根本から変革し、業務効率化・顧客体験向上・新規価値創造を実現する取り組みです。
厳密な定義はありませんが、「マーケティング」「デジタル」「トランスフォーメーション」から構成されるワードであることから、DXの一環としてマーケティング領域の業務変革を実施することと解釈できます。
変化の激しい市場環境や競争の激化に対応するためにも、マーケティングDXは欠かせない取り組みといえるでしょう。
デジタルマーケティング・DXとの違い
マーケティングDXと、デジタルマーケティング・広義のDXの違いを以下の表にまとめました。
項目 | デジタルマーケティング | マーケティングDX | DX(デジタルトランスフォーメーション) |
定義 | デジタルで施策を最適化 | マーケティングプロセスを変革 | 組織や業務、ビジネスモデルを変革 |
対象 | マーケティング活動全体 | マーケティング部門全体(業務・戦略・人材) | 全社(経営・業務・文化) |
目的 | 集客・認知拡大・CV率向上 | 顧客主体のマーケティング戦略の構築、業務効率化 | 継続的な競争力の強化・新規価値創出 |
手段・施策例 | SEO・Web広告・SNS運用 | MA(マーケティングオートメーション)導入SFA(セールスフォース・オートメーション)導入・データ活用・顧客体験設計 | 業務自動化・SaaSなどのデジタルツール導入・経営戦略改革・組織風土変革 |
デジタルマーケティングは「マーケティング業務をデジタル化する」ための手法や施策のことです。
一方、マーケティングDXは「マーケティング部門の業務プロセスや組織の変革」を含む広範な概念です。
そしてDXは、マーケティング領域に限らず企業全体を対象とする戦略と解釈できます。
関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?なぜ必要か、メリット・デメリットを紹介
マーケティングDXの課題と対策
タナベコンサルティングが実施した「マーケティング・プロモーションに関する企業アンケート調査」によると、マーケティングDXに取り組む企業の多くは、以下のような課題に直面しています。
専門的に行う部署・チームがない | 42.5% |
DX人材がいない | 35.0% |
具体的な成果が出せない/見えない | 32.3% |
ビジョン・経営計画にマーケティング戦略orDX戦略がない | 32.3% |
社内の教育体制がない | 28.2% |
マーケティングDXを推進するには、戦略の構築と併せて組織体制・人的資本の整備も重要であることがわかります。
参考:マーケティング・プロモーションに関する企業アンケート調査|PRTIMES
マーケティングDXを加速させるツール
マーケティングDXを成功させるには、適切なツール選択が重要です。
企業が実際に導入している主なツールと導入目的・成果を、以下の表にまとめました。
導入企業 | ツール名(種類) | 目的 | 成果 |
KDDI | Salesforce Marketing Cloud/ Data Cloud(MA) | サービス別MA基盤を統合 | 同時実行施策数が200から600に増加 |
NTTデータ | Adobe Marketo Engage(MA) | 採用活動におけるコミュニケーションとリレーション強化 | 個々の学生の興味・関心に合ったコミュニケーションを実現上 |
旭化成 | Tableau(BI) | サイロ化された情報の可視化・統合 | 分析時間短縮と意思決定の迅速化 |
協和 | Treasure Data CDP(CDP) | 顧客データ基盤を整備、個別マーケティング強化 | 実行スピードの向上と個別のデータ管理 |
自社の課題や目標に応じて、最適なツール構成を検討しましょう。
関連記事:サイロ化とは?原因や解消した事例をわかりやすく解説
マーケティングDX推進に欠かせない4つの領域
マーケティングDXを進めるうえでは、次の4つの重要な領域があります。
- 顧客体験を軸にした価値提供の再設計
- マーケティングを支えるシステム基盤の革新
- データ活用とDX人材の育成による推進力強化
- 組織体制と業務プロセスの最適化による変革
以下にそれぞれ解説します。
顧客体験を軸にした価値提供の再設計
顧客体験を軸に価値を再設計することは、マーケティングDXにおける最も重要な領域のひとつです。
主な流れとしては以下の通りです。
- 理想的な顧客体験と品質を明確に定義
- カスタマージャーニーに沿った一貫した体験を提供
- 顧客データやフィードバックを継続的に収集・分析
- PDCAサイクルを実践し、顧客体験のアップデートを図る
顧客の状況や行動パターンに応じ、パーソナライズされた体験を提供することで、顧客満足度を向上させることができます。
マーケティングを支えるシステム基盤の革新
システム基盤の革新は、マーケティングDXにおいて施策の効果を支える重要な要素です。
具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
- 統合顧客DBの構築・活用によるデータ活用基盤の強化
- オンライン商談やコンタクトセンターによる非対面接客を支えるインフラ整備
- ECサイトやD2Cの拡充と販売や在庫連携システムの強化
- BIを活用した経営・マーケティング指標の可視化
施策をスピーディーに確認・分析できる仕組みの整備により、マーケティング活動の精度と効率を向上できます。
データ活用とDX人材の育成による推進力強化
データ活用とDX人材の育成による推進力強化は、マーケティングDXの成否を左右する要素です。
データ活用においては、マーケティング施策のデータ収集と蓄積を仕組み化することが重要です。
ナレッジ・実践知を共有することで、過去の経験から学び、迅速に次の施策に活かせる体制が整います。
人材育成においては、人事評価制度やインセンティブを整備することで、組織全体の変革意欲の向上が期待できます。
データ活用の基盤を整備し、優れた人材を確保・育成できれば、アイデアの早期具現化や実効性の高い戦略立案が可能となります。
関連記事:デジタル人材とは?定義や必要なスキル、DX・IT人材との違いを解説
組織体制と業務プロセスの最適化による変革
マーケティングDXを推進して企業の持続的成長を実現するためには、組織体制と業務プロセスの最適化による自立型組織の確立、そしてアジャイルな変革による競争力向上が重要となります。
具体的に取り組むべきは以下の領域です。
- マーケティング戦略の立案・実行体制の整備
- マーケティング業務の効率化・業務フロー改善
- データ分析・AI技術を活用した業務高度化
専門知見を活用し、全ての顧客接点を一体的に最適化することで、急速に変化するマーケティング環境において、上質な顧客体験・継続的な改善・新たな価値を創造できます。
DXでマーケティング分野の変革に成功した事例
ここでは、DXを通じてマーケティング分野の変革に成功した企業の事例を2件ご紹介します。
- 株式会社アシックス
- 有限会社ゑびや
これから取り組む方は、参考にしてください。
株式会社アシックス|DTC強化とデータ活用で顧客体験を革新
グローバル展開の加速に伴い、直販チャネル(DTC)の強化が急務となっていた株式会社アシックスは、DXに取り組むことでマーケティング領域の変革を進め、顧客体験と業績の向上を同時に実現しました。
自社ECサイトの機能向上とオフライン店舗との連携を推進し、オンラインとオフラインの垣根を無くした一貫性のある顧客体験を提供できる体制を構築。
データ分析により顧客ニーズを把握し、製品開発やマーケティング戦略への反映も実現しました。
データに基づいた意思決定とブランド体験の最適化を両立した結果、業務効率と売上の向上を達成しています。
参考:アシックスのDX推進:グローバル化とデジタル技術によるオペレーショナルエクセレンスと顧客体験の向上|デジタル事例データベース
有限会社ゑびや|データと現場力で売上8.5倍を達成
人手不足や業績不振に悩んでいた有限会社ゑびやは、DXでマーケティング分野の変革に成功し、売上を8.5倍伸ばすことに成功しています。
店舗の多角的なデータを収集・分析し、自社開発のBIツールにて、来客予測AIと可視化されたデータ活用を実施。
データに基づく意思決定が可能となり、マーケティングチャネルや訴求ポイントを変革する攻めのマーケティング施策に活かしています。
現場の実情を深く理解した上でのDX推進により、施策の精度と再現性が大幅に向上。
売上が8.5倍に拡大し、大きな成果を上げています。
参考:データ分析とデジタルツール活用で効率化と売上向上を実現するゑびやのDX|デジタル事例データベース
まとめ
マーケティングDXとは、データやデジタル技術を活用してマーケティング活動全体を根本から変革する取り組みです。
顧客体験・システム基盤・データ活用と人材育成・組織体制の4領域で変革を行うことで、業務効率化・顧客体験向上・新規価値創造を実現できます。
施策や進め方に悩んでいる企業担当者様は、DXコンサルティングの利用がおすすめです。
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