DX
DXを進める組織は変革が不可欠!類型や必要な機能、事例を紹介

DX推進で成果を得るには、デジタル技術導入だけで終始せず、組織変革が伴っている必要があります。
多くの企業がこの課題を見逃し、DXが停滞して当初想定していた目標を達成できていない状況です。
当記事では、DXに必要な組織変革の理由、IPAが提示する4つの組織類型、組織に不可欠な3つの機能について、事例を交えて解説します。
DX推進に組織変革が不可欠な理由
DX推進の効果を十分に引き出して成果に繋げるには、組織変革は不可欠です。
その理由について解説します。
企業全体を巻き込む取り組みになるため
DX推進に組織変革が不可欠である主な理由は、特定の部署・施策から取り組みが始まっても、最終的に企業全体を巻き込む取り組みに発展する可能性があるためです。
経済産業省の「DXセレクション2025」に掲載されている企業の事例においても、以下のような共通点が見られます。
- 経営者がビジョンや戦略を明確に掲げて全社的な変革を推進
- 全社型のクラウドシステム導入によるデータの共有・活用
- DX実現に向けた人材の確保・育成
- 部署をまたいだ専任のDX推進チームの設置
DXの最終的な目的は、「業務そのもの・組織・プロセス・企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と理解しておく必要があります。
関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?
既存の企業風土や制度がDX推進を妨げる要因になるため
DXを進めるうえで、以下のような社内に根付いた従来の文化・制度・慣習は、大きな阻害要因となり得ます。
- 紙と判子に依存したアナログな手続き
- リモートワーク等を認めず出社が前提の就業規則
- 外部アクセスの全面的な禁止等の厳格すぎるセキュリティポリシー
これらはDXに欠かせないデジタル技術の活用・生産性向上・柔軟な働き方を妨げます。
社内の風土・制度の見直しは、DX推進に必要な組織変革における重要な取り組みです。
法制度や業界の慣習の見直しは困難ですが、自社内のルールは経営判断で速やかに変えられます。
DXを実現するための4つの組織類型
IPAが提唱するDX戦略・組織論における、代表的な4つの組織類型、各組織のメリット・デメリット・主な機能を解説します。
経営企画部門推進型組織
経営企画部門推進型の組織は、経営層配下の経営企画部門がDXを推進する類型です。
- メリット
DX推進のための経営資源の投入について、迅速な意思決定が可能となる。 - デメリット
事業部門にDX推進の当事者意識を持たせるのが難しい場合がある。
実際にDX推進を担当する事業部門が無理強いされる感覚に陥らないように、部門間でのコミュニケーションや連携を強化することがポイントとなります。
各事業部門推進型組織
各事業部門推進型の組織は、各事業部が個別にDXを推進する類型です。
各事業部がDX推進に足るITのノウハウを持っている場合に選択できます。
- メリット
事業プロセス・ITノウハウの両方に精通した人材がDXを推進するため、各事業部の業務特性・課題・状況に合致した効果的な施策を実施できる。 - デメリット
社内で競合が発生する可能性、DXが事業部単位の最適化に留まる可能性が懸念される。
全体最適化に向けたDXを目指すために、各部門間で横の連携を強化していくことがポイントとなります。
IT部門推進型組織
IT部門推進型は、IT部門が全社的なDX推進に関するガバナンスを利かせる組織類型です。
IT部門が社内のIT技術を統括している場合に採用可能となります。
- メリット
専用のDX推進部署を持つ必要がなく、IT専門組織が単独でガバナンスを利かせるため全体最適化を行いやすい。 - デメリット
IT部門が負担過多に陥る場合がある、各事業部の業務プロセスの把握が不十分となる場合がある。
IT部門の人員を確保してリソースに余裕を持たせることや、IT部門と各事業部の連携を促進することがポイントとなります。
組織新設型組織
組織新設型は、各部署からDX人材を抜擢し、新たに設立した組織でDXを推進する組織類型です。
たとえば、プロダクト単位で組織を新設するケース、デジタル事業会社を子会社として新設するケースなどがあります。
- メリット
DX施策の推進・改修・変更がチーム内で完結するため、意思疎通が早い。 - デメリット
既存組織を大幅に変化させるため、コスト・リソースの負担が大きい。
前時代的な縦割り組織など、現状の組織構造ではDXが阻まれる場合においては、組織新設型を採用したDX推進が効果的であると考えられます。
DX組織に必要な3つの機能
DX推進に取り組む組織は、戦略に合った組織類型を選ぶと同時に、以下に解説する3つの機能を持たせる必要があります。
必要なデータを収集する機能
DX組織には、自社に必要なデータを収集する機能が不可欠です。
現代は情報の氾濫により顧客ニーズが複雑化しつつあり、データ分析による現状の把握や潜在ニーズの発掘が、ビジネスの成否に大きく影響するためです。
データを収集するには、まずは以下の観点から、データ収集の基盤を整備する必要があります。
- 取得・保有するデータを定義
- データの正確性の確保
- データの最新性の維持
- データの権利関係の明確化
データを適切に収集できる組織へと変革していくことが、DX成功の土台を築く第一歩です。
参考:デジタルトランスフォーメーションのための企業のデジタル基盤について|IPA
収集したデータを活用する機能
データ収集の次の段階として、データを効果的に活用する機能が必要です。
具体的には、データとデジタル技術を駆使した顧客の課題やニーズの発掘を行い、以下のような施策に役立てます。
- 新商品・新サービスの開発
- 既存サービスの改善
- 新規ビジネスモデルの創出
情報社会の現代では、上手くデータを活用できる組織へ変革を進めることが、企業の競争力を高めます。
柔軟にビジネスモデルを変革する機能
DXを推進する組織においては、柔軟にビジネスモデルを変革する機能も必要です。
現代社会は流行の変遷が激しい時代であり、企業は商品・サービスの開発に留まらず、常にビジネス環境の変化へも対応し続けなければならないためです。
変化への対応に時間がかかる従来型の組織では、貴重なビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあります。
柔軟に改善を行える組織であれば、時代に合わせた商品・サービスの提供が可能となります。
DXの組織変革に取り組んだ企業の成功事例
DXの推進のために組織変革に取り組んだ企業の事例を紹介します。
各部門からDX担当者を集めて社長直轄組織を新設した事例
東京センチュリー株式会社は、DX戦略の1つとして企業風土・組織・プロセスの変革を据え、以下のような取り組みを実施しました。
- 社長直轄組織としてDX特命担当を設置
- DX戦略部を新設し、各事業部門から兼務でのキーマンを収集
- 権限委譲による意思決定の迅速化
- セグメント間コミュニケーションの円滑化
- DX研修の拡充・データ分析チームの強化などのDX人材の確保・育成
これらの積極的な組織改革への取り組みにより、同社のDXは業務効率化に留まらず、企業風土そのものも変革を目指しています。
参考:DX白書2023「企業インタビュー|東京センチュリー株式会社」|IPA
各部門への責任者の配置し部署をまたいだDX推進組織の設置を行った事例
株式会社日立製作所は、DX推進において経営者の関与だけでなく、社員の意識改革も重要と考えています。
具体的には、以下に挙げる組織作りと企業文化の刷新に取り組みました。
- 各事業部門にデジタル事業戦略と変革を管轄する役員レベルの責任者を配置
- 組織横断的な改革組織「スマトラ」を設置し、社内のさまざまな改革を支援
- 社内DX事例の公開・共有により無駄の排除・変革スピードの加速を実現
- 社員が自律的にDXに取り組む風土を醸成
KPIにも定量的な指標を設置し、成果評価を行いながら事業の拡大を目指しています。
参考:DX白書2023「企業インタビュー|株式会社日立製作所」|IPA
DX推進のための組織変革は専門家のコンサルティングを活用しよう
当記事では、IPAが提示する4つの組織類型や、DXを推進する組織に必要な機能を解説しました。
DX推進を単なる技術導入で終わらせないためには、組織構造・文化・人材を見直して、全社を巻き込む変革を起こす必要があります。
ノムラシステムでは、企業の現状に寄り添った伴走型のDXコンサルティングを提供しております。
DX推進のための組織づくりに課題を抱えている場合は、お気軽にご相談ください。
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