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プロジェクト統合マネジメントとは?重要性・管理対象・手順を解説
プロジェクトでは、スケジュールやコストなどの管理項目が相互に影響し合うため、個別最適化だけでなく、全体の整合性を保ちながら調整する必要があります。この全体最適を実現する手法が「プロジェクト統合マネジメント」です。
本記事では、プロジェクト統合マネジメントを活用する重要性や9つの管理対象、実施手順について解説します。プロジェクト全体を管理する方法について学び、成功率を高めましょう。
プロジェクト統合マネジメントとは「プロジェクトの各管理項目の全体最適を図るためのマネジメント」
プロジェクト統合マネジメントとは、スコープ・スケジュール・コスト・品質・リスクなど、複数の要素を総合的に調整し、プロジェクトの成功率向上を目的としたマネジメント手法です。
IPAは、プロジェクト統合マネジメントに必要なスキルとして、以下の7つを定義しています。
プロジェクト憲章作成
プロジェクト・スコープ記述書(暫定版)の作成
プロジェクトマネジメント計画書作成
プロジェクト実行の指揮・マネジメント
プロジェクト作業の監視やコントロール
統合変更管理
プロジェクト終結
参考記事:スキル領域とスキル熟達度 (5)プロジェクトマネジメント|情報処理推進機構
プロジェクト統合マネジメントを導入すると、管理項目の個別最適化の際に生じる矛盾を防ぎ、意思決定や進行管理がスムーズになります。例えば、納期遅延が発生した場合は、関連するコストや品質への影響を総合的に評価し、関係者間で調整を行いながら最も効果的な対応策を迅速に決定できます。
なお、類似する用語のプロジェクトマネジメントは、複数のプロジェクトを統合的に管理する管理手法です。プロジェクトマネジメントの管理項目の一つに、プロジェクト統合マネジメントが含まれます。
両者の関係性をより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:プロジェクトマネジメントとは?重要性や手順、注意点について解説
プロジェクト統合マネジメントを活用する重要性
プロジェクト統合マネジメントを導入すれば、プロジェクトにおいて以下の効果を得られます。
リソース配分の最適化
スケジュール・人材・コストを一元管理することで、優先順位に基づいたリソースの再配分や調整が行えるため、人的リソースや予算を最大限に活用できます。
意思決定の迅速化と高精度化
開発・経理・営業など各部門がプロジェクトの進捗や課題を把握できる体制を整えることで、情報共有がスムーズになり、意思決定のスピードと精度が向上します。
市場変化に強いプロジェクト運営を実現
市場変化に伴うリスクを早期に検知し、影響範囲を正確に把握することで、安定したプロジェクト運営を維持できます。
プロジェクト統合マネジメントは、単なる進行管理にとどまらず、限られたリソースを有効に活用しつつ、迅速な意思決定と柔軟なリスク対応を実現します。
変化の激しいビジネス環境において、プロジェクトを着実に成功へ導くためには、統合的なマネジメント体制の確立が欠かせません。
プロジェクト統合マネジメントにおける9つの管理対象
プロジェクト統合マネジメントは、以下9つの管理対象を統合的に管理します。
管理対象
詳細
スコープ
プロジェクトの作業範囲・成果物
スケジュール
納期
コスト
予算
品質
成果物の品質
リソース
人材・設備
コミュニケーション
コミュニケーションの取り方・情報共有
リスク
リスクの検知・対応
調達
調達先の選定・調達物の検収
ステークホルダー
関係者の管理・良好な関係構築
これら9つの管理対象を横断的に統制する役割を担うのがPMOです。PMOは、プロジェクト統合マネジメントの管理対象を理解し、プロジェクト全体で予算の最適な配分やプロセスの標準化などを管理します。
PMOの主な役割については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:PMOの役割とは?PMとの違いや導入するメリット、ポイントを解説
また、プロジェクト遅延を防ぐための対策を知りたい方は、以下の記事が参考になります。
関連記事:プロジェクトが遅れる7つの原因とは?3つのリカバリ方法や事前にできる対策を解説!
【6STEP】プロジェクト統合マネジメントの実施手順
プロジェクト統合マネジメントは、以下の流れで実施します。
プロジェクト憲章の作成
プロジェクトマネジメント計画書の作成
プロジェクト作業のディレクション
プロジェクトの知識マネジメント
プロジェクトの変更マネジメント
プロジェクトの終了
1.プロジェクト憲章の作成
プロジェクト憲章とは、プロジェクトの目的・スコープ・スケジュール・主要ステークホルダーなどを明記したプロジェクトの概要文書です。プロジェクトの全体像について関係者の共通認識を形成し、正式に承認を得るために作成します。
作成時には、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
プロジェクトの目的や成果物と経営方針との整合性を意識し、経営層や現場双方が実施目的を共有できるように作成
リソースやコストなどを達成可能な範囲で具体的に見積もり、実際の体制やリスクを踏まえた現実的な内容を作成
ステークホルダー満足度やROIなどプロジェクトKPIを明確化し、プロジェクト完了時の評価基準を関係者に共有
これらを踏まえて作成することで、目的と責任範囲が明確になり、関係者間の認識を統一した上でプロジェクトをスムーズに進められます。
2.プロジェクトマネジメント計画書の作成
プロジェクト憲章をもとに、プロジェクト統合マネジメントの管理対象の方針をプロジェクトマネジメント計画書として明文化します。
以下が、計画書で記載する内容の一例です。
管理対象
主な記載内容
スコープ
成果物の範囲・要件定義
スケジュール
マイルストーン・納期
コスト
予算・コスト管理方法
作成する際は、専門用語の使用を控え、できる限り定量的に記載することで、認識の齟齬や期待値のズレの発生を防げます。
3.プロジェクト作業の指揮
プロジェクトマネジメント計画書の作成後は、計画書どおりに進められるように、PMがチームメンバーを支援します。
単に指示を出すだけでなく、チームメンバーが抱える課題を把握し、適切なリソースの配分や調整を行う役割も担います。また、質問への回答や進捗確認のミーティングを必要に応じて実施し、業務遂行を管理します。
4.プロジェクトの知識マネジメント
知識マネジメントとは、プロジェクトを通じて得た経験やナレッジを組織で共有・蓄積し、プロジェクトの質を高めるマネジメントです。
例えば、個人の言語化スキルやリーダーシップ力などの暗黙知を、マニュアル化などによって組織知へ転換します。また、プロジェクトの成果物作成に足りない知識があれば、既存情報の活用だけでなく、役立つ可能性がある情報の収集も必要です。
知識の蓄積と活用のサイクルを回すことで、プロジェクトの運営効率が向上します。
5.プロジェクトの変更マネジメント
プロジェクトの変更マネジメントとは、計画と実際の進捗との差を照らし合わせ、計画を調整するマネジメントです。「目標に沿って進んでいるか」「スコープクリープ(*2)が起きていないか」を主に監視します。
また、計画の変更要求が発生した場合は、以下の流れで変更管理を行います。
コスト・スケジュール・品質への影響を精査し、承認や却下の判断を実施
必要に応じて修正を加え、プロジェクトの整合性を確保
変更をプロジェクトマネジメント計画書に反映し、関係者全員に周知
変更管理では、各関係者の業務プロセスや役割に影響が及びます。そのため、ステークホルダー分析で変更の影響を特に大きく受ける人を洗い出し、コミュニケーションを重ねることで、合意を得ることが大切です。
ステークホルダー分析のアプローチ方法については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:ステークホルダー分析とは?チェンジマネジメントにおける役割と進め方
*2:スコープクリープとは、当初のスコープ範囲を超えた追加作業が膨大に発生する現象のこと
6.プロジェクトの終了
「成果物の正式な納品」「契約終了の手続き」「最終報告書の作成」を行い、プロジェクトを終了させます。
プロジェクトの終了は、次のプロジェクトの始まりでもあるため、単に成果物を引き渡すだけでなく、以下のような全体を振り返る活動が必要です。
ミーティングでチームに成果や課題を共有
管理アプローチの評価や改善策の検討
成功要因や失敗要因を分析し、得られたナレッジをドキュメント化
得られた知見を組織全体で共有することで、プロジェクト成功の再現性が向上します。
プロジェクト統合マネジメント成功のポイント
プロジェクト統合マネジメントを効果的に運用するために、意識しておきたい3つのポイントがあります。
意思決定プロセスの「見える化」
プロジェクト管理ツールのタスク管理機能やコメント履歴機能を活用すると、誰が・いつ・どのような根拠で判断したのかを記録できます。その結果、意思決定の経緯や判断材料を可視化でき、合意形成や意思統一がスムーズになります。
データの一元管理と可視化
各部門に分散しているコスト・リソースなどのデータを一元管理することで、情報の重複や漏れを防ぎ、プロジェクト全体の状況をリアルタイムで把握できます。
プロジェクト文化の醸成と定着
プロジェクト文化は、組織共通の目的意識のもとで、各自が自律的に役割を果たす風土を目指す取り組みです。プロジェクト文化を根付かせるには、ナレッジ共有や成功事例の振り返りを継続する仕組みづくりが必要です。
上記3つの取り組みを継続することで、全体を俯瞰して判断でき、業務を継続的に改善できます。
プロジェクト統合マネジメントでプロジェクトの成功率を高めよう
プロジェクト統合マネジメントは、スコープ・スケジュール・コストなど9つの管理対象をまとめて調整し、プロジェクト全体の整合性を保つマネジメント手法です。
各項目間の影響を考慮しながら全体最適を図ることで、リソース配分の最適化や意思決定の迅速化を実現し、プロジェクトの成功率を高められます。
ノムラシステムでは、プロジェクト管理を支える伴走型のコンサルティングを提供しています。プロジェクト統合マネジメントでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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