DX
建設業DXとは?進まない理由と現場が変わる5つの進め方
建設現場で「ICTツールを導入したが誰も使っていない」「システムを入れたが業務は何も変わらなかった」、といった声は多くあります。DXを「ツール導入」として捉えてしまうことが、失敗の原因です。DXの本質はツールの導入ではなく、業務プロセスと組織そのものを変革することにあります。
本記事では、経産省・国交省が示すDXの定義から、建設業でDXが進まない構造的な理由、現場が実際に変わるための具体的な5つの進め方まで解説します。
建設業のDXとは:経産省・国交省が示すデジタル変革の定義と業界の現状
建設業DXとは、AI・IoT・BIM/CIMなどのデジタル技術を活用して建設業の業務プロセスや組織を根本から変革し、生産性と安全性を高める取り組みのことです。
経済産業省は2018年のDXレポートでDXを「データとデジタル技術を活用して、業務そのものや組織・プロセスを変革すること」と定義しています。データが現場の意思決定や経営判断に活用されて初めてDXと呼べます。
また、国土交通省は「i-Construction 2.0」を策定し、2040年度までに建設現場の省人化3割・生産性1.5倍の実現を目標として掲げており、業界全体のデジタル変革を官民一体で推進しています。
参考記事:建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制|厚生労働省
参考記事:国土交通省|第1節 担い手不足等によるサービスの供給制約
建設業DXに取り組むべき理由
建設業がDXに取り組むべき理由は、法規制と構造的な人手不足という2つの要因にあります。
具体的には以下の2点が急務となっています。
- 時間外労働の上限規制により、従来の長時間労働で補うモデルが通用しなくなった
- 就業者数の減少と高齢化:2024年時点で55歳以上が37%、29歳以下は12%
時間外労働の上限規制により、従来の長時間労働で補うモデルが通用しなくなった
2024年4月から建設業に対して時間外労働の上限規制が適用され、原則として月45時間・年360時間を超える残業ができなくなりました。他業種に5年遅れての適用であり、長時間労働が常態化していた業界にとって大きな転換点となっています。
同じ工期・同じ品質を少ない労働時間で実現するためには、業務プロセスそのものを見直し、生産性を高める仕組みをつくることが不可欠です。
参考記事:国土交通省|直面する課題(令和7年版国土交通白書)
就業者数の減少と高齢化:2024年時点で55歳以上が37%、29歳以下は12%
建設業の就業者数は1997年のピーク時685万人から、2024年には477万人へと約30%減少しています。さらに深刻なのが年齢構造で、2024年時点で55歳以上が約37%を占める一方、29歳以下はわずか約12%と高齢化も進んでいます。
このままでは10年後に経験豊富な従業員が退職し、技術継承ができなくなるリスクがあります。経験豊富な従業員の知見をデジタル化して属人化を解消し、少ない人数でも同じ品質の成果物を出せる仕組みを今から整えることが、業界を守るうえで不可欠です。
関連記事:省人化とは?省力化・少人化との違いから具体例、進め方までわかりやすく解説
参考記事:日本建設業連合会|建設業の現状(建設業労働)
参考記事:国土交通省|最近の建設業を巡る状況について
建設業DXが進まない3つの理由
DX推進に着手しても成果が出ない建設企業には、同じような問題があります。
具体的には以下の3点が主な障壁となっています。
- デジタル人材の不足
- 多重下請け構造による合意形成の困難さ
- ROIの不透明さによる投資判断の遅れ
デジタル人材の不足:現場のリテラシー格差がDXの足かせになる
国土交通省「i-Construction 2.0」では、2040年度までに建設現場の省人化3割・生産性1.5倍を実現する目標が掲げられ、その達成にはICTを使いこなせる人材の確保・育成が不可欠とされています。
建設業ではこれに加えて、現場のリテラシー格差が特に大きいのが現状です。事務スタッフはパソコンを使っていても、現場の職人は日常的にパソコンやツールを使わないケースもあり、新しいシステムを導入しても「使わない」ということもあります。
デジタルリテラシーの底上げは一朝一夕にはできません。ツール導入と同時に、使い方の研修・フォローを並走させる設計が不可欠です。
多重下請け構造のため、関係者間の合意形成が進みにくい
建設業は元請け・一次下請け・二次下請けという多重下請け構造のため、1つの現場に複数の企業・業者が関わる場合もあります。ツールを導入しようとしても、取引先が対応していなければ連携が成立しません。
「元請けが使うシステムに下請けも合わせなければならないが、そのコストを誰が負担するのか」という問題が生じやすく、業界全体での足並みの揃いにくさがDX推進の速度を大きく下げています。国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」でも、長時間労働の是正・給与水準の改善と並び、生産性向上に向けた受発注者間でのデータ共有・ICT活用の推進が掲げられており、日本建設業連合会も重層下請構造の改善や適正な取引慣行の徹底を会員企業に呼びかけています。
参考記事:国土交通省|「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定
参考記事:日本建設業連合会|建設業ハンドブック
ROIが見えにくい
建設DXへの投資は、短期的なコスト削減効果が数値で見えにくいという特性があります。特に中小の建設企業では「何百万円かけて、どれだけ工期が短縮されるのか」を事前に示すことが難しく、経営層の承認が得られないケースもあります。
中小企業庁「中小企業白書」でも、中小企業がデジタル化・DXに踏み切れない理由として「効果が分からない・効果を測定しにくい」「人材不足」「コスト負担」が上位に挙げられています。
スモールスタートで成果を可視化することが突破口になるでしょう。
参考記事:中小企業庁|中小企業白書
参考記事:国土交通省|最近の建設業を巡る状況について
建設業DXの進め方:As-Is把握から始める5ステップ
建設業DXで成果を出すには、最初からシステム刷新を目指す必要はありません。現状業務の「意図」を正確に把握してからTo-Beを描き、小さな成功体験を積み上げながら変革の範囲を広げていくアプローチが、現場の納得と組織の変化を両立させる現実的な道筋です。
具体的には以下の5つのステップで進めましょう。
- Step 1 現状把握(As-Is):「手順」ではなく「意図」まで聞くヒアリング
- Step 2 課題の優先順位付けと方針決定
- Step 3 To-Be業務フローの設計:全員で「変えた後の姿」を言語化する
- Step 4 スモールスタートで試験導入:小さな成功体験をつくる
- Step 5 全体展開とチェンジマネジメント:定着させることが目的
Step 1 現状把握(As-Is):「手順」ではなく「意図」まで聞くヒアリング
まず取り組むべきは、DXツールの選定ではなく現場の業務実態を正確に把握することです。どの工程に何時間かかっているか、誰がどんな情報をどこに伝えているかを丁寧にヒアリングします。
重要なのは「手順」だけでなく「なぜその工程があるのか」という意図まで引き出すことです。長年の経験から生まれた独自の建築ノウハウが工程に組み込まれているケースがあり、表面的な業務フローだけを見て標準化してしまうと、会社独自のノウハウが失われるリスクがあります。
関連記事:DXアセスメントとは?意味・メリットから種類、実施方法までわかりやすく解説
Step 2 課題の優先順位付けと方針決定
As-Isで洗い出した課題を整理し、「どこから着手するか」を決めます。業務効率化への影響度が大きく、かつ短期間で成果が見えるテーマを最初のターゲットとすることで、社内の推進力を得やすくなります。
DX施策の規模・適用ケースは以下のように整理できます。
| 対応規模 | 向いているケース |
| RPA・現場管理アプリ | 書類作成・転記・写真管理の自動化 |
| BIツール・ダッシュボード | 工程データや原価の可視化 |
| BIM/CIM導入 | 設計・施工・維持管理の統合 |
| 基幹システム刷新 | 全社データの統合と経営基盤の変革 |
優先順位の決定では「どの数字を成果として参照するか」を経営と現場で擦り合わせておくことが重要です。ノムラシステムコーポレーションでは、「何が、いつのデータを参考にして計算式を作るのか」を擦り合わせながら決めています。
建設DXでも同様に、ROIの基準と測定対象を最初に固めることで、後工程の手戻りと評価のブレを防げます。
Step 3 To-Be業務フローの設計:全員で「変えた後の姿」を言語化する
As-Isで明らかになった課題をもとに、改善後の業務フロー(To-Be)を設計します。「どの工程をデジタルに置き換えるか」「人の判断を残す工程はどこか」を明確にし、関係者全員が共通のゴールを持てる状態をつくります。
To-Beの設計は推進担当者だけで進めず、現場担当者と一緒にプロセスを踏みます。ノムラシステムコーポレーションが大切にしている「お客様と対話しながらシステムに関わる」姿勢は、現場と一緒にゴールイメージを言語化するこのフェーズで最も活きます。
Step 4 スモールスタートで試験導入:小さな成功体験をつくる
To-Be設計が終わったら、いきなり全社展開するのではなく、1つの現場・1つの工程から試験導入をすると良いでしょう。スモールスタートの目的は「失敗のリスクを抑えること」だけでなく「従業員に認識してもらい、DX化のモチベーションを向上させること」もあります。
「電子黒板を使ったら写真管理業務が7割削減された」「現場管理アプリで協力会社とのやり取りがスマートフォンで完結した」、こうした具体的な数字が、DX化につながります。
参考記事:日本建設業連合会|建設DX事例集
Step 5 全体展開とチェンジマネジメント:定着させることが目的
成果の確認ができたら、全社・全現場へ展開していきます。このとき最大の壁となるのが定着です。
ツールを入れることはあくまで手段であり、本当のゴールはツール導入により業務効率化を図ることです。経営層が必要性を発信し続け、現場の疑問に向き合う対話を重ねることが、ツールの定着につながります。
私たちノムラシステムコーポレーションでは、システムを入れることだけではなく本当の課題を解決することを目指して、定着フェーズまで伴走することを徹底しています。
関連記事:チェンジマネジメントのフレームワークとは?特徴と事例で学ぶ成功のポイント
建設業のDXを進めるならノムラシステムコーポレーション
建設業のDXは、単なるツール導入ではなく業務プロセスや組織そのものを変革する取り組みです。本記事では、DXの定義から進まない理由(人材不足・構造課題・ROI不透明性)を整理し、現場で成果を出すための具体的な5ステップを解説しました。重要なのは現状把握から始め、小さな成功体験を積み重ねながら全体へ展開することです。
ノムラシステムコーポレーションは、これまでのDX支援実績をもとに、要件定義から運用・定着まで一貫して伴走します。現場との密なコミュニケーションを重視し、定着まで支援できる点が強みです。単なるシステム導入にとどまらず、現場の実態に即した変革を実現し、中長期的な生産性向上と持続的な成長を支えます。
関連記事:DXコンサルティングの失敗しない選び方!失敗事例と対策も徹底解説!
FAQ
Q1: 建設業DXはどこから始めればよいですか?
まず現場の業務実態(As-Is)を正確に把握することから始めると良いでしょう。ツールを先に選ぶのではなく、「どの工程に何時間かかっているか」「なぜその工程があるのか」を現場担当者にヒアリングし、課題を明確にしてからツール選定に進むのが失敗しないための基本です。RPAや現場管理アプリなど1〜3ヶ月で成果が見える施策からスモールスタートすることをおすすめします。
Q2: 中小の建設企業でもDXに取り組めますか?
取り組めます。大規模なシステム刷新は必要ありません。まず1つの現場・1つの工程から試験導入し、成功体験をつくることが現実的な第一歩です。国土交通省や経済産業省が提供するIT導入補助金・ものづくり補助金も活用できるため、コスト面のハードルも下げられます。
Q3: BIM/CIMは必ず導入すべきですか?
必須ではありません。BIM/CIMは設計・施工・維持管理の全工程でデータを統合できる強力な手段ですが、導入には6ヶ月〜2年の期間と相応の初期投資が必要です。まずAs-Is把握で現状の課題を明確にし、課題の規模に合ったツールから着手することが重要です。RPAや現場管理アプリで小さな成功体験をつくってからBIM/CIMへ移行するアプローチが着実です。
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