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SAP EWMとは?旧WMとの違いと利用権・保守期限、移行先2択の選び方
SAP S/4HANA へ移行したあとも、倉庫管理だけは旧来のWM(LE-WM)を使い続けている企業は少なくありません。
ただし、SAP S/4HANA 上で旧WMを使う場合は利用権に期限があります。SAP ECC で使う場合は、ECC本体の保守期限が判断の基準になるため、対象によって確認すべき期限が異なります。移行先も SAP EWM の一択ではありません。
この記事では、SAP EWM の機能、旧WMとの違い、対象ごとに異なる利用権・保守期限、そして SAP EWM と Stock Room Management のどちらへ進むかの判断手順を、SAP公式の情報をもとに整理します。
※本記事は2026年9月22日時点の公開情報にもとづいています。
SAP EWMとは、倉庫内の作業を管理するSAPの倉庫管理システム

SAP EWMとは、SAPが提供する倉庫管理システム(正式名称:SAP Extended Warehouse Management)で、倉庫内のどこに何がいくつあるかを保管棚の単位で管理し、入庫から出庫までの作業を指示する仕組みです。日本語では拡張倉庫管理と表記されることもありますが、同じ製品を指します。
最初に押さえたいのは、在庫管理を担うMMモジュールとの役割の違いです。どちらも在庫を扱うため混同されやすいものの、管理している対象が異なります。
MMが管理するのは、品目ごとの数量と金額です。保管場所(Storage Location)という単位までは分かりますが、その保管場所の中で商品がどの棚にあるかまでは持っていません。
SAP EWM が管理するのは、倉庫内の物理的な作業です。保管棚(bin)の単位で在庫の位置を持ち、入庫した商品をどの棚へ置くか、出庫のときにどの棚から取るかを指示します。
MMが「A倉庫に100個ある」まで分かるのに対し、SAP EWM は「A倉庫の3列2段目に100個ある」まで分かる、と考えると違いを捉えやすくなります。
商品の種類が多く、倉庫内の移動距離や作業の順番が業務効率に直結する現場ほど、SAP EWM が扱う領域が重くなります。
関連記事:SAPモジュールとは?主要なモジュールの機能と関連性を解説
関連記事:SAP製品による在庫管理とは?メリットや基本機能を解説
参考記事:SAP|SAP Extended Warehouse Management
SAP EWMでできること|主な機能の一覧
SAP EWM の主な機能は次の11点です。どの倉庫でも使う基本機能と、取扱量の多い倉庫や自動倉庫で効いてくる機能に分かれます。
基本となる機能
倉庫を動かすうえで土台になる機能です。
- 保管棚(bin)単位の在庫管理
- 入庫時の棚決定
- 出庫時の在庫引き当てと出庫作業の指示
- 倉庫内移動の管理
- 棚卸
出庫時の在庫決定では、出庫対象となる在庫や保管棚を決め、ピッキング作業につなげます。倉庫内に出庫できる在庫があるかという点で出荷可否や欠品判断にも関係しますが、受注時の納期回答にはATPなどの仕組みも関わります。
関連記事:在庫引き当てとは?基本的な考え方から効率化の方法まで徹底解説!
大規模な倉庫や自動倉庫で使う機能
取扱量が多い倉庫や、自動倉庫を導入している倉庫で効いてくる機能です。
- スロッティング:どの商品をどの棚に配置すると作業が短くなるかを決める機能
- クロスドッキング:入庫した商品を保管せず、そのまま出庫へ回す機能
- ヤード管理:トラックと待機場所の割り当てを管理する機能
- 付加価値サービス(VAS):ラベル貼付や詰め合わせなど、倉庫内で行う加工作業を管理する機能
- 労務管理:作業者ごとの作業時間や生産性を把握する機能
- RFID:ICタグの電波を使って、商品や荷物を非接触で識別・追跡する仕組み
参考記事:SAP|SAP Extended Warehouse Management の機能
旧WM(LE-WM)とSAP EWMの違いと、利用権・保守期限

旧来の倉庫管理機能であるWM(LE-WM)は、SAP S/4HANA において標準の構成ではなくなりました。
SAP Note 2270211 は、LE-WM が SAP S/4HANA オンプレミス版のターゲットアーキテクチャ(SAPが標準として想定する構成)ではないと明示しています。代替として挙げられているのは、SAP EWM と、SAP S/4HANA 1909 以降で利用できる Stock Room Management の2つです。
注意が必要なのは、使用権の期限が対象によって分かれることです。対象を取り違えると、対応の時期を誤る可能性があります。自社がどれに当たるかを先に確定させてください。
| 対象 | 期限の種類 | 期限 |
|---|---|---|
| SAP S/4HANA オンプレミスで互換スコープとして利用する場合 | Compatibility Packの利用権期限 | 2026年5月31日※ |
| SAP S/4HANA のクラウドサブスクリプションで利用する場合 | 契約上の利用権期限 | 契約内容によって異なる |
| SAP ECC(SAP ERP 6.0 EHP6~EHP8)で利用する場合 | メインストリーム保守期限 | 2027年12月31日 |
※SAP公式はCompatibility Pack全体の最終移行期間を2026年5月31日まで延長しています。LE-WMへの適用を含む自社環境での最終的な扱いは、SAP Note 2269324またはSAPの担当者に確認してください。
互換スコープとは、SAP S/4HANAへの移行後も、旧来の機能を暫定的に利用できる仕組みです。SAPはオンプレミス版のCompatibility Packについて、利用権の期限を2025年12月31日から2026年5月31日まで延長しました。
LE-WMは2030年まで利用できる例外領域に含まれていないため、2026年5月31日が期限と考えられます。ただし、自社環境への適用は、SAP Note 2269324またはSAPの担当者に確認してください。
SAP ECCでLE-WMを利用している場合は、ECC本体の保守期限に準じます。SAP ERP 6.0のEHP6~EHP8は2027年12月31日まで、EHPなし~EHP5は2025年12月31日でメインストリーム保守を終了しています。EHP6~EHP8は、追加費用による延長保守を2030年12月31日まで選択できます。
旧WMの継続利用を含め、今後の選択肢は次の3つです。
| 項目 | 旧WM(LE-WM) | Stock Room Management | SAP EWM |
|---|---|---|---|
| S/4HANAでの位置づけ | 期限付きの互換スコープ | 1909以降で利用可能 | SAPの戦略的倉庫管理製品 |
| 移行対応 | 期限まで継続利用 | 専用のデータ移行は原則不要※ | 導入・移行が必要 |
| 機能範囲 | 互換スコープの範囲 | 基本的な倉庫管理 | 自動倉庫を含む高度な倉庫管理 |
※Stock Room Managementへの切り替えに専用のデータ移行は原則不要ですが、対象外機能の確認や設定の見直し、SAP S/4HANAへの移行作業は別途必要です。
期限を過ぎてから検討を始める場合
SAP S/4HANAオンプレミスのCompatibility Packに設けられた最終移行期間は、2026年5月31日で終了しています。期限後に検討を始める場合も、まず自社環境におけるLE-WMの利用状況を確認する必要があります。
まず自社の処理が Stock Room Management のスコープに収まるかを判定し、そのうえで移行の要否と時期を決めます。判定の結果しだいでは、SAP EWMを新たに導入せず、Stock Room Managementで運用を続けられる場合もあります。
関連記事:SAPがサポート終了!2025年(2027年)問題と対応方法を紹介
参考記事:SAP News|SAP Announced Final Transition Period for Compatibility Packs for SAP S/4HANA On Premise
参考記事:SAP|SAP Note 2269324 – SAP S/4HANA Compatibility Scope Matrix
Stock Room Management と SAP EWM のどちらを選ぶか
SAP EWM への移行は、すべての企業にとって必要な対応とは限りません。Stock Room Managementのスコープに収まるのであれば、SAP EWMを新たに導入せず、既存のLE-WMを基盤とした運用を続けられる場合があります。
判断は次の順で進めることをおすすめします。
- Stock Room Management のスコープに収まるかを確認する
- 適合確認プログラムで自社の状況を判定する
- 収まらない場合に SAP EWM を検討する
Stock Room Management のスコープに収まるかを確認する
Stock Room Management は、LE-WM の主要部分を再利用する仕組みです。そのため、LE-WMからStock Room Managementへ切り替えるためだけの専用のデータ移行は原則不要とされています。ただし、対象外機能の確認や設定の見直し、SAP S/4HANAへの移行作業は別途必要です。
カバーされるのは、保管棚の管理、入出庫、倉庫内の移動、棚卸です。日々の倉庫運用に必要な処理は含まれています。
一方、次の7つのコンポーネントは Stock Room Management の対象外です。自社が使っている機能が含まれていないかを確認します。
| コンポーネント | 略号 | 内容 |
|---|---|---|
| Task & Resource Management | WM-TRM | 倉庫内の作業と、作業者・設備の割り当てを管理する |
| Warehouse Control Unit interface | WM-LSR | 自動倉庫の制御装置と連携する |
| Value Added Service | WM-VAS | 倉庫内で行う加工作業を管理する |
| Yard Management | WM-YM | トラックと待機場所の割り当てを管理する |
| Cross-Docking | WM-CD | 入庫した商品を保管せず出庫へ回す |
| Wave Management | WM-TFM-CP | 出庫指示をまとめて一括で処理する |
| decentral WM | WM-DWM | 倉庫管理を別システムに分離して運用する |
上記の一覧は SAP Note 2270211 の記載にもとづいています。
適合確認プログラムで自社の状況を判定する
SAPは、自社の運用が Stock Room Management のスコープに収まるかを確認するためのプログラムを用意しています。
SAP Note 2882809 を適用したうえで、トランザクション SE38 から STOCKROOM_COMPLIANCE_CHECK を、すべての本番クライアント(SAPシステム内の独立したデータ領域)に対して実行します。
机上の検討だけで判断せず、実際の運用データに対して実行し、どの処理が対象外に該当するかを洗い出します。
判定結果に出るのは「どの処理が対象外か」までです。その処理を業務として今後も続けるのか、運用を変えて Stock Room Management に寄せるのかまでは出ません。切り分けは、現場の作業実態と照らして判断する必要があります。
収まらない場合に SAP EWM を検討する
判定の結果、対象外のコンポーネントを使っている場合は、SAP EWM への移行を検討する段階に入ります。
SAP EWM を検討したほうがよいのは、次のような場合です。
- 自動倉庫やマテリアルフローシステム(搬送機器の動きを制御する仕組み)と連携している
- Stock Room Management の対象外となる7つのコンポーネントのいずれかを使っている
- 新しく倉庫を立ち上げる予定がある
SAPは新規の倉庫については SAP EWM での構築を方針として示しているため、これから倉庫を増やす計画がある場合は、既存倉庫の扱いとあわせて検討します。
参考記事:SAP|SAP Note 2270211 – S4TWL: Warehouse Management (WM)
参考記事:SAP Learning|Differentiating the SAP Solutions for Warehouse Management
SAP EWMの構成|Embedded と Decentralized のどちらを選ぶか

SAP EWM を導入する場合、SAP S/4HANA の中に組み込む構成と、別のシステムとして分ける構成のどちらかを選びます。
2つの構成の違いは次のとおりです。
| Embedded EWM | Decentralized EWM | |
|---|---|---|
| 設置場所 | SAP S/4HANA の中 | SAP S/4HANA とは別のシステム |
| マスタの連携 | 取引先・品目・バッチを直接参照でき、CIF(マスタ連携の仕組み)が不要 | 別システムのため連携の設定が必要 |
| 向いている倉庫 | 標準的な規模の倉庫 | 大規模倉庫・自動倉庫・処理量が多い倉庫 |
Embedded EWM は、SAP S/4HANA の中で SAP EWM が動く構成です。取引先マスタ、品目マスタ、バッチマスタを SAP S/4HANA から直接参照できるため、CIF を使う必要がありません。なお、ライセンスの区分のうち Basic Warehouse Management(基本機能に絞った利用区分)は、Embedded の構成でのみ利用できます。
Decentralized EWM は、SAP S/4HANA とは別のシステムとして SAP EWM を構築する構成です。処理量が多くても他の業務の性能に影響しにくく、大規模な倉庫や自動倉庫との連携に向いています。ただし、同一システム・同一クライアントのローカルな保管場所とは連携しないという制約があります。
選ぶ基準になるのは、倉庫の規模、自動化の有無、処理量の3点です。ただし実務で判断が難しくなるのは、現時点の規模ではなく、今後の拠点展開や自動化の計画と突き合わせる場面です。
関連記事:SAP S/4HANA Cloudとは?メリットや導入事例、注意点を詳しく解説
参考記事:SAP Community|SAP EWM Deployment Options – embedded vs decentral warehouse management
SAP EWMへの移行を検討するならノムラシステムコーポレーション
旧WM(LE-WM)を継続利用できる期間は、利用環境によって異なります。SAP S/4HANAオンプレミスではCompatibility Packの利用権、SAP ECCではECC本体の保守期限を確認する必要があります。自社環境に適用される期限は、SAP Note 2269324またはSAPの担当者に確認してください。
移行先も SAP EWM の一択ではなく、Stock Room Management という選択肢があります。どちらへ進むかは、自社が使っている機能がスコープに収まるかが起点になります。
まず STOCKROOM_COMPLIANCE_CHECK で対象外の処理を洗い出し、今後も業務として続けるかを現場と照らして決めます。
ノムラシステムコーポレーションは、SAP導入とその後の運用を長く支援してきたコンサルティング会社です。
適合確認プログラムの判定結果を業務側と読み解き、対象外になったコンポーネントを現行運用のどの作業が使っているかまで洗い出したうえで、移行の要否と時期を整理します。倉庫管理の方針についてお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
SAP EWMに関するよくある質問
Q. SAP EWM と一般的な倉庫管理システム(WMS)は何が違いますか
A. Embedded EWMはSAP S/4HANAと同じシステム内で稼働し、取引先・品目・バッチなどのマスタを直接利用できます。そのため、別システムとして導入する一般的なWMSに比べて、マスタ連携やシステム間通信の構成を簡素化できます。ただし、Embedded EWMでも入出庫伝票を介した処理が基本です。
Q. SAP EWM の導入にはどのくらいの期間と費用がかかりますか
A. 倉庫の数、自動倉庫との連携の有無、Embedded と Decentralized のどちらを選ぶかによって大きく変わるため、一律の目安はありません。判断の順序としては、まず Stock Room Management で足りるかを確認し、SAP EWM が必要と決まった段階で対象倉庫と機能範囲を絞り込んでから見積もりを取る形になります。
Q. SAP EWM の資格にはどのようなものがありますか
A. SAPは SAP EWM の認定資格とトレーニングを提供しています。資格は導入プロジェクトに関わる技術者に向けたもので、自社が SAP EWM へ移行すべきかという検討とは別の話になります。移行の判断については、この記事の「Stock Room Management と SAP EWM のどちらを選ぶか」をご覧ください。
Q. Stock Room Management に切り替える場合、追加の移行作業は必要ですか
A. LE-WMからStock Room Managementへ切り替えるためだけの専用のデータ移行は原則不要とされています。ただし、使用している機能が定義されたスコープに収まることが前提です。また、対象外機能の確認や設定の見直し、SAP S/4HANAへの移行作業は別途必要です。SAP Note 2882809を適用したうえでSTOCKROOM_COMPLIANCE_CHECKを実行すると、自社の処理が範囲内かを確認できます。
Q. SAP S/4HANA Cloud でも Decentralized の構成は使えますか
A. はい、使えます。ただし呼称が異なり、SAP S/4HANA Cloud Private Edition では Extra-stack / In-stack という呼び方で構成が提供されています。Public Edition での扱いを含め、契約形態によって選べる構成が変わるため、自社の契約内容にあわせた確認が必要です。
東京MXの番組で、ノムラシステムコーポレーションが取り上げられました。詳しい内容を知りたい方は、ぜひ下記のYouTube動画をご覧ください。
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